「週末の予定は?」
オンライン英会話で、簡単な自己紹介を終えた直後のことでした。講師から投げられたのは、たったこれだけの質問です。それなのに、私の口は動きませんでした。
受験でもその後の勉強でも、英文は読めていました。長文を読んで設問に答えることなら、それなりにできる。なのに、中学生でも答えられそうな質問に詰まる。あのときの、言葉が出てこない感覚は今でも覚えています。
「英語は読めるけど話せない」というのは、能力が足りていないという話ではありません。私の場合、原因ははっきりしていました。それまで積み上げてきた訓練が、全部「読むため」のものだったからです。
この記事では、私が実際に詰まった原因を2つに絞って書きます。そのうえで、働きながら実践している具体的な進め方を4つ紹介します。最後に、今も私が話せていない部分についても正直に書きました。
(筆者は受験英語止まりの状態が長く続きましたが、働きながらIELTSを5.5から6.5まで上げ、オランダの大学院に進みました。)
なぜ「読めるけど話せない」のか?2つの原因
原因①:積み上げてきたのが「読むための訓練」だったから
私が英語を読めるようになったきっかけは、はっきりしています。高校2年生のときの英語の先生の授業です。
その先生は、授業で扱った長文問題を英語で解かせたあと、何も言わずに同じ長文問題の日本語訳を配って、もう一度解かせました。生徒は薄々気づきます。これ、さっきの長文の日本語訳だ、と。日本語ならみんな解ける。その体験を先に踏ませる仕掛けでした。
そのあとで、こう言われました。
長文は読めなきゃ解けないんだ。
ではなぜ読めないのか。それは日本語と英語は語順が違うから。英語の語順に慣れないと返り読みを永遠にしなきゃならない。では、返り読みをなくすには何が必要か? 英文を暗記、暗唱すること。何もないところから英文を暗唱できれば、その英文は自分のものになり、返り読みはなくなる。テストでも授業で扱った長文の中の文章を書かせる問題を出す。これなら赤点だって回避できるでしょ?だって答えを丸暗記できるんだから。
この暗唱は、実際に効きました。返り読みは減り、英文は読めるようになり、入試も突破できました。
ただ、ここが決定的に重要なところです。この暗唱は、最初から最後まで「読むため」の暗唱でした。先生の言葉をもう一度見てください。目的は一貫して「返り読みをなくす」こと。話すためだとは、一言も言っていません。実際、テストでの出し方も「書かせる問題」でした。声に出して覚えたものを、紙の上で確認する設計です。
つまり私は、読むための訓練を正しくやって、読めるようになった。そのうえで、話すための訓練だけを一度もやらないまま社会人になったわけです。
「読めるけど話せない」は、努力が足りなかった結果ではありません。多くの場合、やってきた訓練の種類が、話すことに向いていなかっただけです。読める時点で、土台はすでにあります。
原因②:口から出せる「文」のストックがないから
では、あの「週末の予定は?」で私は何に詰まっていたのか。長いあいだ私は、単語が出てこないからだと思っていました。語彙が足りないのだ、と。
これは、あとになって違うと分かりました。詰まりの正体は、そこではなかったのです。
そのあとどういう内容が来るのか、そしてその内容に該当する単語をどう使うのかを知らない。これが本当の詰まりでした。単語は知っているのに、その単語が実際の文の中でどう並ぶのかを持っていない。だから一語目が出ても、二語目が続かない。
読解のための語彙は、意味が分かれば用が足ります。文章の側が先にあって、こちらは受け取るだけだからです。ところが話すときは、自分の側が文章を作らなければいけません。意味を知っていることと、その単語を並べて文にできることは、別の能力です。
当時の私に足りなかったのは、単語の数ではなく、口から丸ごと出せる「文」のストックでした。
👉 その「文のストック」をどう増やすのかは、瞬間英作文の記事に書いています
👉 口から出せる文のストックが、書く場面でどこまで届いたのかはこちらです: 英語日記を2週間でやめた私が、効果を感じられなかった理由
「読めるけど話せない」を抜け出す4つの進め方
①:話すための素材を「文ごと」暗唱して仕込む
やることは、高校のときと同じ暗唱です。違うのは目的だけ。返り読みをなくすためではなく、口から出すためにやります。
単語をバラバラに覚えるのではなく、文ごと覚える。日本語訳を見て、英文がすらすら口から出てくる状態まで持っていきます。私はDUO 3.0でこれをやりました。1つの例文に4〜5語が入っているので、単語と文脈が必然的に「線」でつながります。DUOの例文は、実際の会話でそのまま使うことが多いです。
今はCNN English Expressで同じことを続けています。意味の塊ごとにスラッシュで区切って前から読む、英語から日本語へ、日本語から英語へ、最終的に文全体を暗唱する。高校で教わったやり方と、手順はほぼ同じです。
ただ、正直に言っておきます。暗唱という作業は、とても負荷がかかります。「暗唱すればいい」と軽く書けるものではありません。長い文や複雑な文だと、1本を口に乗せるだけでかなりの時間がかかりますし、気持ちの負担も大きいです。
ひとつコツがあるとすれば、文にすると、その文の光景がイメージしやすいということです。単語単体だとイメージしづらく、定着しにくい感じがあります。逆に、自分が普段まったく接していない場面の文は、光景が浮かばないぶん暗唱に苦労します。
👉 具体的な暗唱のやり方はこちら: IELTS Speaking・Writingが伸びない人がやるべきこと|DUO 3.0で”窮屈な英語”から抜け出した話
👉 音読と暗唱の効果がどこに出るのかは、こちらで詳しく書いています: 英語の音読の効果は「読む力」に出ました|意味ないと感じる理由
👉 音声に口が追いつかないときに何が起きているのかは、こちらです: シャドーイングができない・ついていけない|私が変えたのは速度と発音の順番でした
②:「入れる作業は家、思い出す作業は移動中」に分ける
社会人にとって、いちばん現実的な問題は時間です。ここについて、よくある「決まった時間に席につきましょう」という話は書きません。私自身、それができていないからです。スマホを開けばSNSに吸われて、学習アプリまで辿り着けない日もあります。
代わりに私がやっているのは、作業の種類で場所を分けることです。
音読と暗唱、つまり「実際に頭に入れる作業」は家でやります。これはまとまった時間と、声を出せる環境が要る作業だからです。隙間時間には向きません。
そして「思い出す作業」を通勤時間などの移動中に回します。家で入れた文を、小声で呟いてみる。それだけです。
この分け方には、思わぬ副産物がありました。思い出そうとすると、必ず「あれ、なんだっけ」と出てこない箇所が現れます。その詰まった箇所が、そのまま自分の苦手な部分、つまり伸びしろを教えてくれるのです。家に帰ってからそこを確認すれば、次はもう少し出てくるようになります。
時間がないと感じている人ほど、この分け方は効くと思います。隙間時間に新しいものを入れようとすると、たいてい失敗します。隙間に乗るのは「思い出す」ほうです。
👉 関連記事:仕事しながらIELTSを勉強する時間術/社会人がIELTSを独学で6.5取った全手順
③:覚えた文を組み合わせて、独り言で話してみる
暗唱で文が溜まってきたら、次はそれを組み合わせて自分の話を作ります。私は独り言でやっています。相手も予約も要りません。
このとき意識しているのが、結論 → 理由 → 具体例 → 結論という型です。型を先に決めておくと、次に何を言うか迷わずに済みます。原因②で書いた「そのあとどういう内容が来るのか分からない」という詰まりに、直接効く部分です。
暗唱した文が、ここで初めて「線」につながっていく感覚があります。覚えた文をそのまま吐き出すのではなく、自分の言いたいことの部品として使う。この段階を踏むかどうかで、実際に人と話すときの出方が変わってきます。
👉 独り言のやり方と、続かないときに何が起きているのかはこちら: 英語の独り言は「覚えた文の組み合わせ」でした|出てこない・続かない理由
④:アウトプットの場を持つ
最後に、実際に話す場です。独学の弱点は「話す相手がいない」ことに尽きます。仕込んで、思い出して、独り言まで回しても、本番がなければどこかで頭打ちになります。
ただし、順番には気をつけてください。私は、この順番を守らずに失敗しています。土台がないままオンライン英会話に飛び込んだ結果が、冒頭の「週末の予定は?」でした。そのあとも足が遠のいたわけではなく、「やらないよりはマシ」と正直ダラダラ続けていました。ただ、詰まる理由そのものには向き合っていませんでした。
とはいえ、飛び込んだこと自体は後悔していません。
👉 その「週末の予定は?」で固まったときに何が起きていたのかは、別記事に詳しく書きました: オンライン英会話で撃沈しました|英語は読めるのに何も出てこなかった、初心者だった頃の話
詰まったからこそ、自分に何がないのかが分かりました。これから始める人にも「飛び込んで大丈夫」とは言えます。ただ、①〜③を並行して回してください、というのが私の結論です。「いきなり人と話すのはまだ怖い」という段階なら、AI相手のアプリで口を慣らすところから始めるのも一つの手です。私はスピーク(Speak)に2ヶ月課金して使い、今も時間に余裕があるときに触っています。恥ずかしさを気にせず「口を動かす回数」を稼げるのが利点です。
👉 うまく言えなかったときの気持ちのほうを書いた記事もあります: 英語が話せない悔しさの正体|バネにしようとして、できなかった人へ
👉 実際に2ヶ月課金して使った正直なレビューはこちら: スピーク(Speak)の評判は本当?2ヶ月使った私が正直に書くレビュー
もし「ただ話すだけでは不安」「正しい英語で覚え直したい」なら、書いてから話すタイプのオンライン英会話が効きます。自分の言いたいことをまず英作文し、講師に添削してもらってから話す。すると、①でやった暗唱の素材が、既成の例文ではなく自分専用の文になります。
私の場合も、会話がきちんと成り立つようになったのは、暗唱で土台を作ってから、この「自分の言葉を添削してもらって、覚えて話す」段階に進んでからでした。
👉 書いてから話す練習ができるサービスの体験談はこちら: 【実体験】ベストティーチャーのレビュー
それでも、今も話せていない部分があります
ここまで書いておいて何ですが、私はもう困らなくなりました、という話にはできません。今も残っている壁があります。
ひとつは、専門ではない分野です。政治や金融のような話題になると、いまだに慣れません。もうひとつは、ネイティブが本当に使うスラング混じりの日常会話です。「?」となることが今でも多いです。
通勤電車でBBCを聴いていても、討論の中でネイティブ同士が笑い合っている部分で「ん?」となることがよくあります。留学して日常会話に困らなくなったあとでも、生の速い英語には置いていかれます。
これを書くのは、脅すためではありません。逆です。「読めるけど話せない」を抜けるのに、完璧になる必要はないということです。私は今も全部は聞き取れていませんし、話せない話題もあります。それでも、あの「週末の予定は?」で固まっていた地点からは、確かに動きました。
まとめ
「英語が読めるけど話せない」原因は、私の場合この2つでした。
①積み上げてきたのが「読むための訓練」だったから。②口から丸ごと出せる「文」のストックがなかったから。単語力の問題でも、才能の問題でもありませんでした。
やることは、①文ごと暗唱して仕込む → ②入れる作業は家・思い出す作業は移動中に分ける → ③覚えた文を組み合わせて独り言で話す → ④実際に話す場を持つ、の4つです。
読めるのなら、土台はもうあります。足りないのは、その土台を口に乗せる訓練だけです。
👉 IELTS Speaking対策におすすめのオンライン英会話3選【社会人向け】/【実体験】ベストティーチャーでIELTS5.5→6.5レビュー
🗺️ この記事は「話せるようになる順番」のステップ①(原因を知る)です。全体像と自分が今いるステップを確認したい方はこちら→ 英語を話せるようになる順番【全5ステップ】


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